【はじめに】これは、私が福井在住だった頃に最も長く帰省していたときのメモの断片である。日記がベースなので長文になってしまった。正確な日付を失念したりとか、あまりに記憶力が頼り無い部分もずいぶんあるのだが、その点御承知いただければ幸いである。
1997年４月○日 始まりはリムジンバス。
帰省したのは正月半ば以来だっけ。今回２週間もの帰省を決意したのも、すべては今日の予定がきっかけである（別に相方のことが大嫌いになったわけではないが、連日お疲れモードのようなのでたまには一人にさせてあげようと思ったのも事実）。オフ会のビデオや写真を見て顔は知っているけれど、実際はほぼ初対面のネット仲間十数人と一緒に某フュージョンバンドのライブに行くのだ。今日は実家に帰らず、ライブのあとそのまま新宿のホテルに息子と泊まる予定だ。実家の親にあまり負担をかけたくないというのもあるが、何より「こんな時間まで子ども連れ回して…」という反応をされるのが私自身苦痛なのだ。
お昼過ぎに羽田に着いたが、待ち合わせ時間までずいぶんあるので先にチェックインしてしまおう。荷物もあるし、電車はやめてリムジンバスを選択。幸いすぐの時間に出る新宿方面行きのバスがあった。ちょっと余分な出費になるけれど、せっかくの機会だから乗る。電車に乗るよりは少し時間を要したが、そこそこ快適。終点は新宿副都心の某ホテルなので、新宿駅西口で途中下車。しかし泊まるホテルは駅の東側。荷物＋ベビーカーだとそこまで歩くのがかなりハードだったが、チェックインさえしてしまえば重たい荷物からはとりあえず解放されるので気は楽だ。無事に目的地まで辿り着きチェックイン。JRの線路が良く見えるシングルルームに案内された。子どもにおにぎりを食べさせつつ、適当に荷物整理。部屋の鍵がカードキーなので、なくさないように大事に身につけたところで、待ち合わせ時間が近くなった。
新宿駅近くの某所で待ち合わせ。それらしいメンバーが続々集まって来る。こちらもベビーカーで子どもを連れているのですぐにわかったと口々に言われてしまう(笑)。楽器店を素見し、なぜかその正面で記念(?)写真（但しデジカメで）を撮ったりする。ライブの開始時間が遅めなので、ファーストフード店に寄り道などしつつ、勤め帰りのメンバーが徐々に集まるのを現地で待つ。この日のチケットはスタンディング席。とりあえずベビーカーを会場の入り口にたたんでおき、始まるまで息子を遊ばせておく。始まってからの爆音に少々驚いた様子だったが、大混乱もなく一安心（しかし、周辺の人にかなりの迷惑かけてしまったようで申し訳ない。考えてみりゃ困った客だよなあ、自分…）。こちらはわりとミュージシャンから近い位置にいたので、なかなか楽しめた。足が少々痛かったが。結局ライブ後の飲み会までおつきあいし、ホテルに戻ったのはずいぶん遅くなってからだった。息子は窓の外の電車を見ながら興奮してなかなか寝付いてくれそうもない。そういう私も興奮から醒めそうにない。この分だと明日はチェックアウトぎりぎりまでここにいる羽目になりそうだ。
1997年４月★日 おいおいっ…
お昼過ぎから、当時入っていた母子サークルの人の家に息子とともに訪問予定。福井から帰省した私を歓迎してくれるらしい。何組かの母子が集まると言うが、電話で話しただけで初対面の人ばかり。場所は東武伊勢崎線沿線の埼玉県M団地の一室。昔私が住んでいた団地の部屋と同じ3Kの間取りだったが、構造がちょっと違う。30分ぐらい経過してうちを含めて母子４家族が出そろった。愚息より年令が少し上の子どもが何人もいると非常に賑やかで、２歳前の彼は圧倒されて少し固まっている。
いきなり手ぶらじゃ失礼だろうなと思い、子どもの身体にも安心できそうなお菓子（といっても舟和の芋羊羹とあんこ玉の詰め合わせ）を持って行くが、なぜかこれが大不評。持ち寄ったお土産の中ではいちばん不健康そうなマクドナルドのポテトLサイズ３つだけが、小さな子どもたちのお腹にどんどん入って行く。食事はまだかと尋ねられ、出前メニューを渡されたので、ふだん家であまり食べないピザかパスタを希望したが、他の人は「ご飯が食べたい」と口々に言うので成り行きで喫茶店の出前メニューから選ぶことになる。私がきのこのスパゲッティなどを頼む一方で、他の人はご飯付きの定食メニューを注文。家で毎日食べてるようなモノばっかじゃん、と私は思ったのだが、彼女らにしてみれば人に作ってもらった食事は何でも有り難く感じるとか。まあそれも真理だが。ともかく、一通り美味しくいただいた。そうしたら、「ダイヤさん（実際は本名だが）、代金は税込みで○○円ね」。あれー、てっきりおごりだと思ったのに、違うの？こういうところはいかにも主婦らしく、変なところでしっかりしてる人たちだ。
少ししたら帰ろうと思っていたが、サークル代表のNさん が夕方に来ると言うのでもうしばらくお邪魔させてもらう。彼女は単独でやってきた。電話の印象通り姐御肌の女性で、しかも人懐っこい。正直言って彼女が来るまで居心地が悪かったのだが、彼女の話術や人柄にすっかり惚れ惚れしてしまう。しかし、他の人たちは私そっちのけの態度で「今喋らなくてもいいだろう」と突っ込みたくなるようなことばかり喋っていて、つまらない（＊）。もう少しNさんと御一緒したかったのだが、日が暮れる前にお暇する。帰りは春日部を回り、久々に東武野田線の柏より西側の区間に乗ったが、相変わらずまったり、のんびりと走っている。乗った電車が旧型のツリカケモーター音を発する5000系だったからなおさらそう感じてしまった。
（＊）まあ滅多に会う人たちじゃないからなあと思っていたが、案の定その１年後にサークルは自然消滅。そんなものか。
1997年４月□日 ジャズな夜
ネットを介して知り合ったE嬢と新宿で会う。初対面なので、前もってお互いに自分の特徴を言っておいたが、なかなか声をかけられない。待ち合わせ場所付近をうろうろしている女性を見て「もしかすると…」と思うと、向こうから声がかかった。このあとはあるジャズピアノの大御所のライブに行くのだ。実は参加メンバーに私の大好きなミュージシャンがいて、そちらが私の個人的目的だったりするのだが。久しぶりの新宿の街。かつてはずいぶんと歩き回ったものだが、今じゃすっかり土地勘がなくなって、ライブハウスまで少々迷ってしまう。それでもどうにか開場前に間に合った。大規模ホールの前で開場を待つのはいやだが、ライブハウス前で待つのは大好きだ。扉が開いてリハーサルの音が漏れたり、時折出演者がちらっと外に出て来たり、そんなことがある度にわくわくするのだ。
開場後は適当な席を見つけて、カウンターでドリンク受け取って、ついでにおつまみも頼んで開演までお喋り。ネットでしか知り得なかった彼女だが、実際に会って話してみるととても魅力的な人だ。色々と共通点があるのもわかり、前よりももっと親しみを感じた。やはりオンラインで好感を持った人はオフで会って損がない、とでもいうのかな。そうこうしているうちに開演。
１曲あたりの演奏時間をいっぱい取って（そりゃジャズのライブだから、インプロゼイションでCDよりも長い演奏になるわけである）、オリジナルもスタンダードも取り混ぜて数曲で、あっという間にライブ終了。非常に満足度が高かったのだが、ひとつだけ個人的に残念だったことがある。休憩時間中にミュージシャンたちがお客さんに混じってカウンターにいたのだが、緊張のあまりその誰とも話すことができなかった私である。サインもらいたかったんだけどなあ。だけど大好きなミュージシャン氏を久々にナマで見ることができたから、よしとしよう。
1997年４月◇日 再会
十数年来の友人とまたも新宿で待ち合わせ。今回はなんか新宿に縁のある帰省だ。まあ、神奈川県在住の友人に柏まで出て来てもらうのはちょっとキツいし、距離的に公平かなと思う。今日は約４年ぶりぐらいの再会になった。オープンして間もない南口の高島屋タイムズスクエアを見て歩く。田舎の店とは違う都市型の大型店鋪は歩くだけでも退屈しない。福井に帰っちゃったら、郊外型のお店ばかりでこんなところはないもんなあ。下から１フロアずつ見て上がって上層階の飲食店フロアまでたどりつき、パスタの店でランチをいただく。そのあとはひたすらお喋り。向こうのタイムリミットまでつきあって別れる。
今日もとっても楽しかった。次に会えるのはいつになるかわからないだけに、別れがいつも惜しい。でも、またどこかで会えるよね。っていうか、会ってよね、お願い。
1997年４月▽日 骨董品レンタル
先日のライブオフのメンバーの１人で、実家近くの地域に住んでいるP氏にノートパソコン一式を借りる。まだウィンドウズもない頃のMS-DOSで動くマシンだが、その時代の名機と言われている機種だ。古い通信ソフトを使ったことがないので一通り使い方を聞いてから借りたわけだが、パソコンの性能云々よりも実家の電話回線にあまり長時間繋げられなかったのがストレスになった。それに何より、短いケーブル類しかないので、回線のある玄関から部屋に入って通信できず、結局夜中に階段でちょこっとチャットしたりメールチェックしたりという程度しか使えなかった。それでも何もないよりましではあるが。これ以来、モバイル機が欲しくて仕方ないという気持ちが強くなったが、当分それも果たせそうにない。
1997年４月×日 結局ヒマになっちゃったらしい。
帰省するちょっと前の話だが、ネットでライブのチケットを持て余していた人がいた。今回聴きに行った何本かのライブとは趣が違うもので、お店も初めての場所なので行ってみたかったのだが、メールの先着順でチケットを渡す人を決めていた様子だったらしく、結局チャンスは来なかった。今日は予定を開けていたけれど、帰って来てからあっちこっちに出てばかりだと実家の親に呆れられているし、親の仕事が休みの度に子どもを預けてどこかに行きっぱなしだったから、まあいいか。
昼はベビーカーを押してちょっと遠いところまで散歩。駅までの徒歩20分が結構長かった。が今日は電車にもバスにも乗らない。なんだかひたすら歩きたかった。駅を通り抜けてからも適当に道を進み、電柱や壁の町名を見て、その辺に縁のある友人知人のことを思い出したりしたが、まさか平日昼にここにいる訳ないよなあ、なんて思いながらいくつもの住宅地を大回りで通り過ぎる。息子は私のそんな思惑を感じることもなく、ただひたすらマイペースで眠ったり、お菓子を欲しがったりして殿様のようにベビーカーにどっしり座っていた。こんなとき、子どもはうらやましいとただ感じてしまう。
1997年５月某日 それでもなお、ライブ
今日のライブは新宿でなく渋谷。ジャンルはやはりフュージョンだが、ドラムとベース主体のかなりマニアックなセッションである。ゲストに某大御所ギタリストが出るのでそれも楽しみだ。このギタリスト氏は先日のジャズライブにもいたメンバーだが、ここではスタイルの違う演奏を聞かせてくれるはずである。まずはメインの２人が登場、日本屈指レベルの凄腕のライブパフォーマンスを大いに堪能。ゲスト登場で更にその場は盛り上がり、物凄い熱気と余韻を残してライブは終了した。
終わったあとは先日のライブオフでも会った面子数人で何となく集まる。食事をおごっていただいてなんだか恐縮する。帰りは実家近所住人のP氏と柏まで一緒に行動し、電車を待つ間のモバイルチャットに少々乱入させてもらったりして、駅前のバス乗り場で別れた。
1997年５月楽日 地元オフ
そんなわけで、ネット上で音楽と柏が縁で知り合った人たちとオフ会。一応昼の部と夜の部に分け、それぞれ待ち合わせ場所を決めておく。まずは「柏に住んでいてここを知らないとはモグリ」だと思うカレー専門店『ボンベイ』（あまりに有名なお店だが）でランチ。ここのカシミールカレーは美味しいのだが、今日は子ども連れなので辛いカシミールはやめてドライカレーにしておく。これも美味しい。そのあとは適当に街歩きしながら（CDショップ巡りなんかもやったかな？）次の集合時間まで過ごす。
夕方は飲み会になったが、ここのメンバーならではの「濃い〜ぃ」話題が炸裂、音楽関係はもちろん、なぜか鉄ネタも一部で出ていたっけ。電車に乗らずに帰れる場所にいるとあって、結構遅くまで盛り上がった。
何はともあれ、皆さんお疲れ様！！
1997年５月◎日 締めくくりは…
音楽と思い出に浸った今回の帰省。明日帰るというところでもう一丁イベントである。汽車旅が好きな人たちの集まりに久しぶりに出てみた。やっぱり皆さん音楽関係でつながりを持った人とはノリが違う。個人的にちょっとパスしたいようなことにも出くわすが、久しぶりだったので総合的にはまあまあ楽しめたかな。その集まりが終わったところで、付き合いの長い人たちに飲みに誘われたが、親に預けた子どもが心配だったし、明日帰ることも考えてドリンク１杯でお暇する。
今回もいろいろな出会いがあったし、実家で過ごしているときにもいろいろな発見があった。明日小松空港に到着するその瞬間から、日常生活は戻って来る。今回のいろいろな体験を糧に、帰宅しても頑張ろうと思いながら、荷物整理をする私である。また元気をもらいに、「うち」に帰って来よう。
(1997年4・５月のメモより。加筆修正06/20/2002)
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